2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 675-677
脳磁図(MEG)による認知症などの脳機能の診断の指標として自発脳活動の周波数解析結果(MF:mean frequencyなど)が有用であると報告されている。診断において有用であるためには同一被験者が別サイトもしくは別日に検査を行った際に同一の診断結果が得られるような安定性が必要である。しかし、そのサイト固有のノイズや液体ヘリウム(LHe)循環器、被験者から発生しうるノイズによって周波数解析結果は容易に歪められてしまう。そこで本研究では全頭型センサアレイMEGで様々な状況下において収録した自発脳活動データに対してDSSP(Dual Signal Subspace Projection)法を適用し、結果のばらつきが低減されるかを調査した。歯科治療金属の帯磁によるノイズがあるデータに対してDSSPを行ったところ各被験者でMF値が改善された。また、左鎖骨付近に磁性体を張り付け、脳近傍から強力な妨害信号が入ることを想定したデータに対してもDSSPを行ったところ各被験者でMF値が改善された。特にノイズを与えることなくクリーンな状態で収録したデータに対してDSSPをかけたところ、DSSPなしの場合とMFの値はほとんど変化がなく、α波帯の周波数スペクトルが変化しないことが確認されたためDSSPをかけることによるデメリットが極めて少ないことが示唆された。