2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 682-684
"ヒトの随意的な運動制御の基礎として,力制御および位置制御がある.力制御の仕組みは良く分かっているが,位置制御はまだ十分には分かっていない.特に力―筋長関係の下行脚における位置制御の仕組みはほとんど解析されていない.筆者は次の5種の研究により,位置制御の仮説を提案する.1)カエル半腱様筋の収縮力学特性を計測した(山代谷真之ら,生体医工学 2003).2)この結果に基づき,新しい2モード筋モデルを提案した(Akazawa, Adv Biomed Eng 2019).フィラメント滑走モードと伸展によってばね様特性が発現するSTモードである.3)ヒト指伸筋を対象として.等尺性収縮(力制御)および位置制御(指位置を一定値に維持)における運動単位の発射周波数を比較した(Kanosueら,Jpn J Physiol1983).いくつかの運動単位では,位置制御での発射周波数が低かった.4)ヒト指伸筋は下行脚で動作している(Llewellynら, Nature 2008).5)ヒト指伸筋の運動単位の振る舞いを明らかにするために上記の筋モデルを用いてシミュレーションを実施し(Akazawa. Adv Biomed Eng 2020),筋内の一部の運動単位がSTモードで動作することにより,安定な位置制御が可能であることが示された."