生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
育児工学への小児リハビリテーション医学からの期待
小崎 慶介
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 119_1

詳細
抄録

 小児期に端を発する疾患によって生じた様々な障害あるいは障害をきたす恐れのある病態に対してリハビリテーション医療を実施することは、日本におけるリハビリテーション医療の源流の一つである。 運動器の障害により、肢体不自由となっている小児に対して治療と教育を融合させた「療育」という体系を提唱した高木憲次博士は、療育の実践にあたって「時代の科学を総動員すべきこと」を主張した。 小児を対象とする医学及び関連学術領域の知見の蓄積により、従前は治療や対応が困難であった病態や状況に対してより良い対応が可能となってきた。その一部は、デバイス開発など生体医工学の「時代の科学」による研究成果の恩恵を受けている。他方で、小児のリハビリテーション医療の実施には成人の場合と同様、単一の医療職種のみで為されることは無く、常に複数の職種・職域から構成されるチームによる関りが要求される。これらのチームは、しばしば複数の施設に跨り、正確かつ効率的な情報共有が求められるが、小児リハビリテーションを専門的に担っている人材は限られている現状がある。 さらに、最近ではチームの中核に患児本人だけではなく、保護者も積極的に参加できるような働きかけが為されるようになってきている。とりわけ、日常的に人工呼吸器などの医療機器を使用しながら生活している在宅の医療的ケア児においては保護者の役割は大きいが、彼らの受けているストレスは「きょうだい児」への対応も含めて非常に高い状態にある。 障害児を育てる家庭のサポートを限られた医療療育資源の下で有効かつ効率的に行うために、育児工学が提供する「時代の科学」への期待は大きいと考えている。 

著者関連情報
© 2022 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top