2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 119_2
人の脳を構成する各種神経システムの動きの好不調などの偏りを、医学は診断名を使って表現してきた。米国精神医学会では疾患基準の均一化を意図して、症状を重視した診断体系を整備してきた。この流れでは、人の脳内システムの動きのストーリー、人の生き様が見えてこない。この制限された中では、「人の理解」はその分困難となり、支援も俯瞰的でなく部分的になり易くなる。今回、報告者は、人をいかに理解し支援を組み立てるかについて、考え臨床で使ってきた大枠を提示したい。報告者は、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの、主に発達障がい状況を、各システムの動きをもとに、それらの組み合わせ状況として考えてきた(脳システム論と呼称)。具体的には、脳の下部を構成する「不安感知」とそれを払拭する如くの他者への「愛着」、そして脳の上部を構成する、社会生活に必要な他者の気持ちを読む「心の理論」と、これらがあればADHDは発症しないと思われる「抗ADHD機能」、そして上部脳が下部脳を抑制することで「感情コントロール」が成立する、そして主に上部脳を使って各種「学習」を進める、との関係図を描いてきた。そして各システム不調への支援=個別支援計画と考えている。常識的な言葉や考え方を使っての「脳システム論」を基礎とし、この上に各精神疾患・状態を考えている。診断名が異なろうとも、基礎である脳システムは共通しているからである。