2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 120_1
近年,新生児小児領域の医療技術や医療機器の進歩に伴い,複雑な先天性疾患を有する小児を救命できるようになった。その一方で,退院後も人工呼吸器などの医療機器の装着や痰の吸引などの医療ニーズの高い小児(医療的ケア児)が増加している。 これまで病院で医療者によって行われていた医療ケアは,在宅に移行してからは家族(主に母親)が担うことになる。我が子の障害を受け入れるだけでも精一杯な中,母親は我が子の生命維持を委ねられ,医療者ではないにもかかわらず,我が子に医療的ケアを24時間体制で行うため,慢性的な睡眠不足となる。また外出時は医療機器を装着しての移動となるため,医療機器の電源確保が必要となり,さらに医療機器の重量も加わるため親一人では移動に困難を伴う。 2021年9月にようやく「医療的ケア児支援法」が施行された。子どもとの生活の場が自宅だけでなく,学校や地域社会へと広がりを見せている現在,小児用の医療機器は,できるだけ軽量,コンパクトで,扱いやすく,耐久性のあるものが求められている。本セッションでは,医療的ケア児を取り巻く現状と小児在宅医療における医療機器の今後の可能性について報告する。