2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 121_1
スマートウォッチやスマートリングなどのウェアラブルセンサは,心拍数や身体加速度などの生体情報を計測・収集して管理する健康管理機能を有し,運動や睡眠の客観的評価に役立つデバイスとして普及しつつある.そして,我が国が目指すべき未来の目標として,超早期の疾患予測・予防の実現が提唱されており,未病状態から健康な状態に引き戻すための方法の確立と疾患の発症自体の抑制・予防の推進が重要視されている. 非侵襲手法で生体信号時系列データ得られるウェアラブルデバイスは,人間の健康状態の推定や改善に大きく寄与することが期待され,得られたビッグデータを解析する研究が世界中で進展している.米国ではウェアラブルセンサから得られた皮膚体温,心拍数および関連指標と,COVID-19の特徴である発熱,咳,疲労などの症状発現との関連を観察するビッグデータプロジェクトが発足し,生理学的反応検出と罹患予測のアルゴリズム開発を目的として生体情報の収集が進んでいる(TemPredict Study).体内ウイルスの早期検出は感染症の封じ込めにも重要であり,とりわけ医療従事者は,早期予測によって蔓延危険性を低減することができる. このように,パンデミックとの戦いに貢献しうる容易計測手法が模索され,生体信号処理を用いた生体ビッグデータ研究も発展しつつある.報告者らは,これまでにウェアラブルセンサから得られた生体信号に機械学習技術を応用して疾患の予兆を捉える複数の研究に着手しており,心疾患や精神疾患,睡眠障害のスクリーニングを行うアルゴリズムの研究開発を行ってきた. 本発表では,COVID-19の推定に関する最新研究について具体的に紹介した上で,生体医工学分野における展開可能性について述べる.