生体医工学
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内シャント光透視における血管内径抽出自動化に向けての基礎的検討 Ⅱ- 血管内壁境界の推定精度向上の試み -
戸松 大心北間 正崇山下 政司菊池 明泰横山 徹伊藤 佳卓小島 洋一郎清水 孝一神山 英昇
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 194_2

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抄録

 血液透析治療に不可欠な自己血管内シャントは狭窄が生じやすいため,日常的な管理が重要である.本研究室では,近赤外光を用いてこれを定量的かつ非侵襲的に管理する手法の実現に向け研究を行っている.我々の先行研究では,血管透視像の輝度情報から血管内径を計測する手法を検討してきた.しかしこの手法では,血液と血管内壁の境界検出精度において計測者によりばらつきが見られた.そこで,血管内壁境界検出の自動化に向け,機械学習を用いた検討を進めている.これまでの検討では,血管透視像の輝度情報を学習させた CNN (Convolutional Neural Network)の誤差率(血管内径3.0, 4.0, 5.0 mmの平均)は3.7%であった.しかし,撮影位置のずれに対して,境界の推定結果に大きな誤差が生じた.そこで本報では,血管透視像の撮影において正確な位置調整を必要としない手法を考えた.血管透視像の輝度と輝度変化情報を学習させたLSTM (Long Short-Term Memory)を用いて血管内壁境界を推定し,推定精度についてCNNを用いた場合との比較検証を行った.その結果,LSTMと CNN の誤差率(三径平均)はそれぞれ6.7%,8.9%となり,LSTMはCNNより高精度で血管内径を推定できる結果となった.このような検討を通し,LSTMを用いることで,撮影時の位置条件が多少変化しても血管内壁境界推定の精度向上が期待できることを明らかにした.今後は機械学習モデルの最適化により,更なる精度向上を図りたい.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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