2023 年 79 巻 26 号 論文ID: 23-26007
水循環基本計画は,地下水の適正な保全及び利用を明確に位置付けた計画として意義がある.しかし,同計画では,計画区域とされる流域の範囲について議論の余地がある.また,水道や下水道という人工系の水循環の河川との水量的な連続性とその有する意義に関しては言及されていない.本稿では,計画区域として,水源となる河川流域,水道区域,下水道区域を包絡する水循環圏の概念を提案する.そして,同圏域の人工系と自然系の水循環の水量的な連続性,即ち,他流域で取水された都市域の水道水が使用後に下水から処理場を経て再生水となり,都市河川に放流されている実態について分析する.この再生水は,河川流量を維持する重要な水資源となっていることを多摩川の事例を通して検証し,その水循環の意義について生活者の視点から考察する.さらに,この水循環の健全性を診断する方法についても提示する.