生体医工学
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暑熱環境下での使用を想定した熱流補償型深部体温計の改良
新竹 瞬Lu Hanzi野川 雅道内藤 尚西川 裕一根本 鉄戸川 達男田中 志信
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 212_1

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抄録

深部体温とは主に人間の脳や臓器の温度を指し,人体における重要な指標の1つである.最近では,独居高齢者の熱中症予防や暑熱作業者の健康管理などの観点から深部体温を無拘束計測する必要性が高まっている.しかし,従来の熱流補償型深部体温計は体温を超える周囲温度下では正確な深部体温が計測不可能などの問題点がある.そこで本研究では,暑熱環境下での使用も可能な熱流補償型ウェアラブル深部体温計開発を最終目標とし,新規構造のプローブを考案した.その測定原理は,ヒータの代わりにペルチェ素子を使用することで,周囲温度によって加熱と冷却を使い分けることが可能となり,皮膚表面との熱平衡状態を保つという方法である.試作したプローブではアルミシェルの上部に放熱器付きのペルチェ素子を置き,プローブ周りを断熱材で覆った構造となっている.今回,市販の深部体温計(CM-210,テルモ)とのin vitro同時計測実験により性能比較を行った.実験方法は皮膚の代替としてゲルシートを高熱伝導性アルミケースに貼りつけ,水温を37℃程度に設定した恒温水槽内に当該ケースを設置する.そして,市販プローブと試作プローブをゲルシート上に設置し,周囲温度26℃では両プローブ共に水温を正確に計測可能であった.これに対して周囲温度45℃の場合,市販装置では約3℃高めに計測されたのに対して,試作プローブでは誤差の平均値が0.18℃であることから正確に水温を計測可能であり,ペルチェ素子を利用することの効果が確認できたと共に,体温を超える周囲温度下の体温管理への応用が期待される.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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