生体医工学
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スマートフォン内蔵マイクロフォンを用いた心音抽出の検討
林 拓世中川 淳一五十嵐 朗
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 232_2

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抄録

近年,健康寿命向上に向けて健康意識が高まっており,一般向けにも生体信号計測装置が販売されている.しかし,生体信号取得にあたり特殊なセンサが必要なことや装置自体が高価なものも多いことから,一般家庭への普及は十分に進んでいない.そこで本研究では,一般的に普及しているスマートフォンを用い,標準で内蔵されているマイクロフォンにより心音の取得が可能かについて検討を行った.対象は健常成人5名を対象とし,測定装置として電子聴診器とスマートフォンを採用した.心音の測定部位は第4肋間胸骨左縁とし,実験開始直後の安静時5分間とスピーチ課題後の安静時5分間を測定した.心音は電子聴診器の実験開始直後の安静時測定波形から手動で1周期を取得し,自己相関解析により拍出ごとを抽出した.さらに,抽出された波形は加算平均法により基準波形とし,スピーチ課題やスマートフォンの測定波形に対して相互相関解析により心音波形の拍出ごとを抽出した.また,相関解析により取得した拍出ごとの位置情報を用いて位相同期及び非同期成分の評価を行った.結果,各測定装置において心音のI音とII音の抽出が確認された.しかし,心拍変動の影響があるため,特にII音で位相非同期成分が高まることが確認された.以上より,スマートフォンによる心音抽出は可能であり,雑音や心拍変動による影響を軽減することで心雑音の評価が可能であると示唆された.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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