生体医工学
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高壁せん断応力が内皮細胞と共培養した血管平滑筋細胞の表現型へ及ぼす影響
沢崎 薫中村 匡徳木村 直行川人 宏次藤江 裕道坂元 尚哉
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2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 303-304

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抄録

大動脈二尖弁を有する患者において上行大動脈内壁に通常より高い20Pa程度の壁せん断応力が作用することが明らかになっている.二尖弁患者は大動脈瘤や大動脈解離などの大動脈疾患の発症リスクが高く,異常な血行力学環境との関連が指摘されているがその詳細は不明である.大動脈疾患の病理的特徴の一つに,血管壁の中膜に存在する血管平滑筋細胞の表現型転換が挙げられる.健常な血管壁ではほとんどの平滑筋細胞が収縮能を発揮する収縮型を示しているが,病変部では血管壁のリモデリングを担う合成型を示しており,過剰なリモデリングが疾患発症の一因と考えられる.本研究では,血管壁を模擬した内皮―平滑筋細胞の共培養モデルを収縮型に表現型制御した平滑筋細胞を用いて構築し,高壁せん断応力が平滑筋細胞の表現型転換に及ぼす影響を調べた.高壁せん断応力負荷用に開発された平滑筋細胞を含む圧縮コラーゲン組織を表現型制御培地で7日間培養し,平滑筋細胞の収縮型分化を促した.組織上に内皮細胞を播種し1~2日間培養した後,2Paまたは20Paの壁せん断応力を24時間負荷した.その結果,静置培養および2Paに比べ,20Paの壁せん断応力負荷により,収縮型平滑筋細胞マーカータンパクであるαSMAおよびCalponin1発現の低下を確認した.本研究結果は生理的な値より非常に高い壁せん断応力が血管平滑筋細胞の表現型転換を引き起こす可能性を示唆する.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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