生体医工学
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呈示部位の違いが耳栓効果に与える影響:顔面部位への骨伝導
美和 あす華大塚 翔中川 誠司
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2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 334-336

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抄録

骨や皮膚,筋肉などの生体組織を介して音を聴取する方法を骨伝導という.骨伝導音はその一部が直接内耳に到達するため,外耳や中耳の障害に起因する伝音性難聴の補聴に利用されてきた.近年では,外耳孔を塞がない,耳栓装用時にも容易に聴取されるという利点から種々の音声コミュニケーション・デバイスへと応用されており,中にはスマートグラスのように顔面に刺激呈示を行うものも存在する.顔面は人体の中でも特に複雑な構造を持ち,呈示部位に依存した骨伝導音の聞こえの変化が見込まれるが,顔面部位への骨伝導音に係る報告はほとんど存在しない.一方,骨伝導知覚の特徴の一つに,外耳道を閉塞した際に低周波音のラウドネスが増大する現象,即ち「耳栓効果」が挙げられる.耳栓効果を効果的に利用することで低域の聞こえを増強できるため,低周波出力が不足しがちな小型オーディオ機器への応用が期待されている.本研究では,顔面(頬骨,鼻骨,眼窩下部,下顎角およびオトガイ隆起)における耳栓効果の特性の推定を試みた.各部における骨伝導音の知覚閾,および刺激時の外耳道内音圧から耳栓効果を評価し,従来部位(側頭骨の乳様突起,下顎骨の顆状突起,および前額部)との比較を行った.その結果,頬骨を除く顔面部位では従来部位以上の耳栓効果が得られることが明らかになった.また,呈示部位の解剖学的構造により,耳栓効果に影響を及ぼす伝搬成分が異なることが示唆された."

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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