生体医工学
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外耳道内音圧および頭部振動の計測による顔面呈示骨伝導音の伝搬特性評価
上村 昂大塚 翔中川 誠司
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2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 337-339

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抄録

骨伝導は伝音性難聴者用の補聴器に利用されるが,一般に振動子は側頭骨の乳様突起に呈示される.また,健聴者向けのイヤホン等に応用される場合は,下顎骨の顆状突起に呈示されるものが多い.一方,近年のスマートグラスへの応用を図った例では,鼻根部等の顔面部位に呈示されるものも存在する.顔面は人体の中でも特に複雑な構造を有しており,他の部位にも増して呈示部位に依存した聞こえや伝搬特性の変化が見込まれるが,顔面に呈示された骨伝導音の知覚特性,伝搬特性の検討例はほとんど存在しない.本研究では,顔面頭蓋に呈示された骨伝導音の頭部内伝搬過程の解明を目的に,顔面頭蓋上の各部位(鼻骨,上顎骨の眼窩下部,頬骨,下顎骨の下顎角,および下顎骨のオトガイ隆起)への骨伝導刺激時に生じる外耳道内音圧と側頭部の表面振動の計測を行った.その結果,眼窩下部,頬骨および下顎角における各骨伝導伝搬成分の大きさは従来の刺激呈示部位(乳様突起,顆上突起,前額部)と同等であった.一方,鼻骨では外耳道内音圧,オトガイ隆起では振動が低下するなど,各骨伝導伝搬成分の大きさには顔面部位間の差異が観察された.顔面への刺激呈示を利用した骨伝導デバイスの開発においては,刺激部位毎の伝搬特性を考慮する必要があると考えられる.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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