2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 350-352
近年,Inertial Measurement Unit (IMU) を用いた歩行分析に関する研究は数多く報告されている.その中でもHeel Contact (HC) イベントの検出は基礎的で重要なタスクである.IMUを用いたHC検出法は従来多数報告されており,加速度波形の閾値検出やピーク検出で行うことが一般的であるが,歩行パターンによっては検出に失敗する場合が多かった.そこで本研究ではHCのロバストな検出アルゴリズムとして,Triangle Threshold法を提案する.今回開発したTriangle Threshold法は,進行方向加速度の最大減速ピークと立脚中期点を基点とし,形成される三角形の面積が最大になるタイミングをHCと見なすことで,HCで生じる加速度の急峻な変化点を検出する手法である.本研究では,インソールの土踏まず部に装着されたIMUを用いて,10人の健康な被験者,217ストライドの進行方向加速度波形を用いて精度検証を行った.その結果Triangle Threshold法を用いると,99.5%以上の確率でHCを検出することに成功し,そのうち94.9 %は手動でアノテーションされた特徴点と完全に一致した.これらの結果から,今回提案したTriangle Threshold法は安定かつ高精度にHCを検出する手法として,歩行データの収集や分析処理に有用であることが分かった.