生体医工学
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音声による抑うつ状態評価の妥当性の検討
大宮 康宏高野 毅水口 大輔中村 光晃樋口 政和篠原 修二宗 未来徳野 慎一
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2022 年 Annual60 巻 Proc 号 p. 353-355

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抄録

コロナ禍においては、生活様式が大きく変化し、それに伴う不安やストレスの増大も少なくなく、これまで以上にメンタルヘルス不調が問題となっている。新しい生活様式では、人との接触を減らす取り組みが進められており、音声を用いた分析は、手軽にかつ遠隔的に行えるという利点があり、モニタリングにも有効である。本研究では、我々の先行研究において報告した、音声から覚醒度を表す指標ALVI(Arousal Level Voice Index)による大うつ病患者を対象とした抑うつ状態評価の妥当性について検討する。ALVIは、PST株式会社の提供する音声解析サービス「Cloud Analysis WebDK」において、MDVI指標と、その中間指標HE(hurst exponent)およびZCR(zero crossing rate)として解析される。本研究では、都内にある病院を受診した大うつ病患者33名の2回の音声解析と抑うつ状態を評価する自記式質問票の結果を用いた。音声解析には、診察室で13種類の定型文を読み上げた音声から解析したMDVI、HE、ZCRを、自記式質問票には、BDI(ベック抑うつ質問票)およびPHQ-9(Patient Health Questionnaire)の結果を用いた。分析では、音声解析結果と自記式質問票とのスピアマンの順位相関分析を行った。相関分析の結果、MDVIとBDI、MDVIとPHQ-9、HEとBDI、HEとPHQ-9、ZCRとBDI、ZCRとPHQ-9のスピアマンの相関係数は、それぞれ-0.278、-0.149、0.283、0.336、-0.451、-0.345であった。この結果、音声解析と自記式質問票の6つの組合せの内5つにおいて、少なくとも弱い相関(|r|>.2)が見られたことから、音声による抑うつ状態評価の有効性が示唆された。

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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