生体医工学
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センサ付鉗子を用いた術中の自然な動作で実施可能な粘弾性パラメータ算出法の基礎検討
上野 来夢土肥 健純桑名 健太
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 181_1

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抄録

胸腔鏡下手術では視野が狭く把持対象の判別が困難という課題がある.これに対し,センサ付鉗子で計測される対象の硬さの違いから対象を判別する手法の研究を行ってきた.これまで,生体は粘弾性体であるものの粘性の影響を受けない範囲での静的な計測を行ってきた.そこで,本研究では動的計測法を応用し,センサ付鉗子を用いた術中の自然な動作で実施可能な粘弾性パラメータ算出法を提案する.粘弾性パラメータの動的計測法では粘弾性体に正弦波ひずみを与えた際の応力を計測する.このとき,ひずみと応力の位相差から,弾性を表す貯蔵弾性率と粘性を表す損失弾性率を求め,これらの値から粘弾性体のモデルに応じた粘弾性パラメータを算出する.計測対象とする粘弾性体を3要素マクスウェルモデルで表した場合,2つの異なる周波数のひずみと応力から粘弾性パラメータを求めることができる.術中の任意の把持動作に着目すると,把持動作によるひずみと応力の時系列データはフーリエ変換により複数の周波数に分解できる.その内の2つの周波数のひずみと応力を粘弾性パラメータの算出に活用する手法を提案する.これまでに,生体モデルとしてゼラチンを対象に提案手法により粘弾性パラメータの算出を行ったところE∞=67±2.9 kPa,E1=3.9±0.71 kPa,η1= 28±14 kPa·s,τ1=7.1±2.4 sとなった.これらの値は従来の動的計測法により算出した値E∞=69±12 kPa,E1=2.4±0.41 kPa,η1=16±4.4 kPa·s,τ1=6.5±2.6 sに対し,オーダが一致することを確認した.

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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