2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 180_2
近年、微小気泡を付着させた細胞に超音波を照射し、音響放射力によって細胞の誘導制御を行う研究が注目されている。この内幹細胞の動態制御に関する研究[1]では生体内の血管中での誘導に成功した。我々は免疫細胞療法への応用を想定し、T細胞の流路内捕捉制御を行ってきた[2]。この技術の新たな応用として、我々は血管内皮細胞の誘導制御による人工血管の作製を目指している。本研究では、時空間分割照射を導入することで任意形状の音場を作成し、最適な細胞の捕捉条件を検討した。
脱気水で満たした水槽中に、幅2 mm×深さ1 mmのPDMS製直線流路と中心周波数3 MHz で128chの2次元アレイトランスデューサを設置し、流れに対向する方向から60度で音波を60 s照射して流路壁面に細胞を捕捉した。使用した細胞懸濁液の濃度10×104 cells/mLで流速10 mm/sで流路に注入した。3焦点が連続的に繰り返し移動する音場を形成し、捕捉細胞の分布を計測した。各焦点は最大音圧400 kPa-ppのバースト波とし、Duty比の合計を60 %に固定して配分する照射時間を変化させた。Duty比を均等に20 %とした場合と比較し、中央の焦点のDuty比が30 %以上でその前後の焦点で残り照射時間を配分すると捕捉面積が1.2倍以上となった。このように流速と細胞濃度の条件に対し、各焦点に配分する音響エネルギーの最適値が存在することが示され、細胞の効率的な捕捉のための基礎パラメータを導出できた。
[1] T.J.A. Kokhuis, et al, Biotechnol. Bioeng., 112, 2015
[2] T. Chikaarashi, et al, Jpn. J. Appl. Phys. 2022