生体医工学
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光断層撮像法の最適化によるマウス感覚上皮帯の高速ナノ振動計測(5月18日の参加不可能です、その場合演題をお取り下げください)
太田 岳日比野 浩
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 234_2

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抄録

哺乳類の内耳蝸牛は、外界の音で生じた耳小骨の機械的な揺れを受容する。この臓器には、有毛細胞層、支持細胞層、細胞外基質層の3層が複雑に絡み合ったシート用組織である「感覚上皮帯」が分布し、入力を受けてナノ振動する。有毛細胞は、刺激の大きさに応じて自身の感覚毛を屈曲し、毛の先端に発現する機械刺激感受チャネルを通じて細胞外から流入する陽イオン量を調節する。外有毛細胞は、電位依存的に動作するモータータンパク質の働きにより感覚上皮帯振動を増幅させ、聴覚の感受性を高める。しかしながら、この増幅機構は動物が健康な状態でないとすぐに損なわれてしまうため、非侵襲な実験アプローチが必要である。さらに実験モデル動物としてよく用いられるマウスでは、50 kHz 相当の超音波によっても感覚上皮帯が応答するとされ、高速な振動計測法の応用も必須である。そこで本研究では、光エコー法の最適化により、高周波振動領域のマウス感覚上皮帯の断層イメージングおよびナノ動作の測定を試みた。固定された組織切片で報告されてきた通り、上皮帯のエコー像には内部に液トンネル領域が観測された。一方、音による振動は45 kHz付近で最も大きく発生することが確認された。この結果は、過去に低コヒーレンスレーザー干渉計で報告された例とおおむね一致した。本研究により、光エコー法の応用によってもマウス聴覚メカニズムを詳細に調査できることが示唆された。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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