2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 262_1
人間は, 外界から獲得した情報を脳内でカテゴリー別に処理している. そのため, 情報の記憶においてもカテゴリーに依存した符号化が行われていると考えられるが, 記憶符号化に関する脳活動には不明な点が多い. そこで本研究では, 知覚において脳内処理の違いが報告されている生物と無生物のカテゴリーを対象とし, カテゴリー特異的な記憶符号化に関する脳波の検討を行った. 7名の実験参加者に対して生物画像と無生物画像をランダムに提示したところ, 生物画像では頭頂領域, 無生物画像では前頭領域を中心としてシータ帯域のパワー増大が観測された. また, 画像の内容を事後に記憶できていた場合, 記憶できていなかった場合と比較して,各々の領域におけるシータ帯域のパワーが大きかった. したがって, 生物と無生物のカテゴリーに依存してシータ帯域の活動分布が異なり, その違いにカテゴリー特異性が反映されている可能性が示唆された. 更には, 参加者が脳波実験と同様の課題を遂行する中で6Hzの経頭蓋交流電気刺激を頭頂領域に適用したところ, 無生物画像と比較して生物画像を事後に記憶できていた確率が向上した. したがって, 情報の記憶においてもカテゴリーに依存した符号化が行われており, その符号化は分布の異なるシータ帯域の活動で行われている可能性が支持された.