2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 287_1
病原菌が繊維の最表面に付着し、細菌増殖することで院内感染が発生する。この細菌増殖は感染症被害拡大の危険性があり、医療現場で使用する製品の抗菌性向上への需要は高まっている。さらに、一般の生活環境においても抗菌性繊維材料の開発が求められている。そこで、生体適合性や抗菌性を有するダイヤモンド状炭素(DLC)膜に着目した。DLC膜は、成膜方法によりsp3結合とsp2結合比率や水素含有量が変化することから、得られる機能性が変化する。また、DLC膜に新たな特性を付与する目的でケイ素、チタン、フッ素などの第三元素を含有させることも可能である。なかでも、フッ素は酵素阻害、細菌活性を制限し細菌の代謝に影響を与えることが報告され、抗菌効果を有することが知られている。そのため、フッ素含有DLC膜の膜厚に対する抗菌効果を把握することは製品の生産性を考慮する上で重要である。本研究では、繊維材料の一つである綿布に高周波プラズマCVD法を用いてフッ素を付与した異なる膜厚のフッ素含有DLC膜を成膜した。代表的な院内感染の原因菌である黄色ブドウ球菌や大腸菌について、抗菌性の関係を調査した。