2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 295_1
近年,自家再生組織の3次元培養技術の向上により,再生医療が急速に発展すると共に培養工程の最適化が課題となっている.学術研究レベルでは力学試験機を用いた評価が適用されているが,接触法かつ組織全体の機能計測のみにとどまっており,組織内部を断層可視化できない.そのためコンタミネーションを回避しつつ,経時的かつ完全非接触・非侵襲に組織力学特性の定量評価法が求められている.本研究では,組織変位や培養液流動をマイクロ断層可視化するドップラーOCT(OCDV)に,非接触過重負荷デバイスとしてHigh Intensity Focused Ultrasound(HIFU)を導入した超音波援用ドップラーOCT(UA-OCDV)の構築を行った.本報告ではサンプルとしてヒト培養真皮を適用し,酵素処理による組織力学特性の変化を比較評価する.ヒト培養真皮はHDF細胞をコラーゲンゲルに包埋し,3次元培養し作成する.本実験ではヒアルロニダーゼ酵素処理を施し,プロテオグリカンを離脱させた変性ヒト培養真皮と正常ヒト培養真皮を適用した.HIFUによる音響放射圧に起因した組織変位及び液体流動を非接触に断層可視化できていることが確認できた.更に酵素処理によりせん断波伝播や液体流動の変化が確認できた.これは酵素処理により,保水性や透水性に寄与するプロテオグリカンの離脱に伴う組織力学特性の変化を検出していると考えられる.このことから本手法は,培養組織力学特性のマイクロ断層可視化評価法として有効であることが示唆された.