2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 100_2
機械工学に限らず、基礎工学は物理学が基本である。医療系の各分野の学生は、臨床工学分野でさえも、物理学を苦手にしている学生が多数存在する。基礎工学を担当する教員は物理学を教えることよりも、学生がこの分野を嫌いになってしまった理由をよく考察することが必要である。これを踏まえて、講義の対象となる事項を、できれば基礎医学に関連させて興味を持てる内容として構成することが望ましい。そのためには教員自身が、日常的に基礎工学と同時に医学分野を含めた生体工学全般に関心を持つことが大切である。
科学の分野で物理学やその思考法が不可欠であることを納得できなければ、講義が表面的な基礎工学教育に留まり、その知識をそのほかの専門教育に生かすことが難しく、結果として「あの科目は何だったのか」ということになり、再び、物理嫌いを作り出すことになる。
基礎工学に必要な概念は「ディメンジョン」にある。質量、位置、時間など最小限の必要項目を理解した上で、これらの物理的概念に基づいた組合わせを理解することは、結果として物理現象を正しく理解することと等価である。整合性のあるSI単位系で整理しておけば、いくつかの定数を知っておくだけで、公式などに頼らなくても実際に必要な数値計算が可能となる。また、扱う工学だけでなく医学分野でも、分野を超えたアナロジーが基本的な概念を理解する上で役立つ。