生体医工学
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胃電図データを用いた香気評価の可能性
高井 英司中根 滉稀高田 宗樹
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 105_1

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抄録

香気評価は香料開発の重要な過程であり、通常は官能評価により行われる。近年、嗅覚刺激に対する生理応答を利用した生体計測による香気評価も検討されている。生体計測を用いることで、客観的な評価や経時的な変化の追跡が可能となるかもしれない。加えて、嗅覚刺激によるストレスレベルや情動の変化を可視化できる可能性がある。さらに、非言語的な評価であるため、認知症患者などへの適用も期待される。そこで、自律神経により制御される胃の電気活動を計測する経皮的胃電図に着目し、嗅覚刺激時の胃電図データを解析した。解析手法として、一般的な周波数解析に加え、非線形解析として時系列データの最小埋め込み次元を推定する誤り近傍法や、決定論性を並進誤差として定量的に評価できるWaylandアルゴリズムを使用した。濃度の異なるバニラ香料を用いた嗅覚刺激時の胃電図データについて解析を行ったところ、周波数解析には変化が見られなかったが、最小埋め込み次元は濃度によって異なる値を示した。また、並進誤差は香気濃度に伴って増加し、主観的香気強度と強い正の相関が見られた。以上より、胃電図の非線形解析は香気評価方法として有用である可能性が示唆された。今後は、嗜好性や快適性の異なる香料の使用や香気提示方法の検討により、より汎用性の高い評価技術の開発を目指す。

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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