生体医工学
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心臓手術後の急性腎障害を予防するための人工心肺中の管理目標値の探索:単施設後ろ向きコホート研究
佐々木 拓海中西 俊之辻 達也加古 英介田村 哲也藤原 幸一村島 美穂濱野 高行祖父江 和哉
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 167_2

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抄録

【背景】

心臓手術後の急性腎障害(AKI)は、生命予後と関連する重大な合併症のひとつである。人工心肺中の平均血圧や灌流量、ヘモグロビン(Hb)と術後AKIとの関連が報告されているが、予防のための基準値は定まっていない。本研究の目的はこれらの管理目標値を明らかにすることである。

【方法】

2015年4月〜2023年7月に人工心肺を用いて手術を行った18歳以上の患者を対象とした。主要評価項目を術後7日以内のAKI発症(KDIGO基準)または死亡の複合アウトカムとして、人工心肺中の平均血圧(40〜70mmHg)・灌流量(2.0〜2.6L/min/m2 )・Hb(6〜9g/dL)の各閾値を下回った程度と時間の積で面積を求め、関連を検討した。年齢、性別、術前の推算糸球体濾過量(eGFR)、チャールソン併存疾患指数、手術内容、緊急手術、赤血球製剤の投与量を共変量として各閾値ごとに多変量ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】

375人を解析し、182人(49%)がAKIを発症、1人(0.3%)が死亡した。全ての閾値で年齢と術前eGFRがAKIと関連した。平均血圧が70mmHg未満(調整オッズ比[aOR]1.02、95%信頼区間[95%CI]1.00–1.03、100mmHg*minあたり)、灌流量(100L/m2 あたり)が2.2L/min/m2 未満(aOR 3.33、95%CI 1.02–10.9)、2.4L/min/m2 未満(aOR 2.79、95%CI 1.18–6.59)、2.6L/min/m2 未満(aOR 2.37、95%CI 1.26–4.47)、Hb(100(g/dL)*minあたり)が8g/dL未満(aOR 2.62、95%CI 1.26–5.47)および9g/dL未満(aOR 1.48、95%CI 1.11–1.97)の面積が大きいほどAKIと関連していた。

【結語】

人工心肺中の平均血圧を70mmHg、灌流量を2.6L/min/m2 、Hbを9g/dLより高く維持することでAKIの予防に繋がる可能性がある。

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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