2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 209_2
視覚誘発電位(visual evoked potential,VEP)は,視覚への刺激により大脳皮質野に生じる電気反応である.VEPは視覚機能の評価や視覚疾患の診断に利用される.VEPは脳波に比べて低振幅であるため,VEP波形を抽出するためには刺激同期加算平均法が用いられる.加算平均に用いる単一試行データにアーチファクトなどの雑音成分が含まれると,VEP波形の歪みや頭皮上分布特徴に影響を与える.そのため,加算平均を行う際には個々の単一試行波形から加算平均に適したデータを抽出する作業が重要となる.本研究では,これまで視察によって行われていた単一試行波形の選択を,自動化することを目指した.記録された単一試行データより,まず眼球運動と筋電図に起因したアーチファクトを自動検出した.次に,前頭部と後頭部の複数電極に対して,電位変動の大きなデータを自動検出した.上記の手順で選択された単一試行波形を用いて,加算平均波形を得た.頭皮上60チャンネルより記録された運動知覚刺激時のVEPデータ3例に対して本法を適用し,熟練者による視察での選択加算平均の結果と比較した.視察で選択されたデータと自動選択されたデータの一致率は69.5%であり,いずれも明瞭なVEP波形が導出された.本方法は,臨床におけるVEP波形導出の補助手段として有効と考えられる.