生体医工学
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超音波周波数特性解析による血液循環のレオロジーの非侵襲計測
大村 眞朗八木 邦公長岡 亮長谷川 英之
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 217_1

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抄録

超音波エコー信号の周波数特性の変化は散乱体サイズや体積分率の違いに起因する.血液では赤血球が散乱体として振る舞い,免疫異常や炎症反応に関わる一指標として赤血球凝集度が挙げられる.本研究では凝集反応に伴う血球充填率や血球サイズの違いをエコー信号の周波数特性の変化から読み取り,in vivo血液循環のレオロジーの非侵襲計測法を開発している.従来の超音波送受信法では超音波プローブの受信帯域の制約により解析周波数が狭帯域化し,血球サイズ推定精度の不安定性が課題であった.そこで血液からのエコー信号の広帯域化およびS/Nの向上を目的に,広帯域プローブを用いた2周波数励起による新たな送受信法を開発し,3検討項目において単一の短パルスによる従来法と比較した.

S/Nが十分な条件での散乱体サイズの推定精度を比較するために,平均粒径が異なる生体模擬ファントムを計測した.次に,in vivoを再現した赤血球凝集を評価するために,流路ファントム中のin vitroブタ血液の定常ずり速度依存性を評価した.最後にヒトin vivo頸部脈管の計測を行った.ファントムでは提案法および従来法の解析帯域(-20 dB帯域),散乱体サイズ,体積分率の偏り誤差やばらつきは同程度であった.一方,in vitro,in vivoにおける提案法では解析帯域を保持しつつ,低ずり速度での血球凝集サイズの弁別能向上,高ずり速度での凝集解離に伴う推定値のばらつき低下をもたらし,提案法のロバスト性向上を見込めた.

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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