2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 270_2
ヒトや動物における研究から,自律神経機能は副交感神経機能が左半球に,交感神経機能が右半球に偏在している可能性が報告されている.また,他の研究では左前頭葉がポジティブ感情における接近的行動の制御を,右前頭葉がネガティブ感情における回避的行動の制御を担っていると報告されている.接近は望ましい目標や結果を追求し,回避は望ましくない目標や結果を避ける心理的な要因で,動機付けの異なる側面を表している.本研究では,これらの先行研究から,「右半球の活性化は交感神経の亢進と回避傾向を,左半球の活性化は副交感神経の亢進と接近傾向を促進する」という仮説を立て,脳活動の左右非対称性と自律神経活動ならびに接近回避傾向の関係性を明らかにすることを目的とした.成人21名を対象に,対側の大脳半球の活性化を誘発させるためにボールを右手で圧搾する条件と左手で圧搾する条件をカウンターバランス順序で実施した.他に,画面上の文字へ接近か回避を選択することで,接近回避傾向を計測するVAAST課題を実施した.また,全期間で心電図・脳波を同時計測した.相関解析の結果,左手圧搾中のα波非対称性と交感神経指標であるLF/HF,CSIの間に負の相関が得られた.本研究結果は,左手圧搾で右半球が活性化するほど交感神経が亢進することを示唆しており,大脳半球の左右差と自律神経が関係しているという本仮説を部分的に支持するものである.