2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 278_2
筋の粘性は速度/熱的依存性を示し、弾性は伸長距離に影響される。また、変位筋音図(dMMG)は、筋断面積の変化にともなう皮膚の膨隆を距離という物理量で測定する。受動的な関節運動によって変化する筋の形態を反映するdMMGを用いることで、筋粘弾性特性の変化を推定できるのではないかと考えた。大腿直筋(RF)、内測広筋(VM)および外測広筋(VL)から筋電図(EMG)とdMMGをMMG/EMGハイブリッドセンサで同時計測し、膝関節角度をゴニオメータで取得した。実験参加者は椅座位で、ペダルの上死点を基準に膝関節が90度となるように姿勢を固定した。受動的関節運動は自動ペダリング装置の回転数を10、30、50rpmの3パターンで実施した。各信号はサンプリング1kHzで50秒間計測した。dMMGの正弦波様波形から、波高値、立上り/下り時間および膝関節角度との位相差を算出した。実験の結果、各筋において波高値および立上り/下り時間と回転数との間に差は見られなかった。一方、RFとVMにおいてdMMGと膝関節角度の位相差が回転数とともに増大した。この結果は、ペダリングストロークが同一の運動において、筋の伸縮における周波数の増減によって筋の粘性成分が変化したことを示している。筋粘弾性を変化させることにより、dMMGはそれ自体に影響は見られなかったものの、実際の関節運動の周期との位相に関係している可能性がある。