2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 316_2
背景
動脈インピーダンスは、動脈系の血圧ー血流関係を定量化し、動特性を含めた包括的な血管特性を表す。肺動脈インピーダンス(PAZ)の測定では体循環と比較して、上流圧(肺動脈圧;PAP)に対する下流圧(左房圧;LAP)の比が大きい。左心不全はLAPが上昇している病態であり、肺高血圧症を合併し右室後負荷に影響を及ぼすことがある。LAP成分を分離することで左心不全におけるPAZの測定精度が向上する可能性がある。
方法
ラット(n=8)を用いて、肺動脈血流(PAF)、PAP、LAPを同時測定し、PAZはアドミッタンスの逆数として算出した。アドミッタンスは1)PAPを入力、PAFを出力とした1入力1出力(I1O1解析)と、2)LAPを考慮した2入力1出力(I2O1解析)の2方法で計算した。正常条件及び大動脈弓部結紮と輸血介入による左心不全を模したLAP上昇後に、I1O1解析とI2O1解析でのPAZと測定精度を比較した。
結果
介入によりLAPは3.2±1.0 mmHgから20.8±4.0 mmHg、PAPは17.3±3.3 mmHgから33.5±3.4 mmHgに上昇した。I2O1解析では正常条件とLAP上昇時の両条件で高精度にPAZを測定できた。一方、I1O1解析ではLAP上昇時に低周波数域 (0.12-1.0Hz)で、I2O1解析のPAZ測定に比べコヒーレンスが低下し(0.77±0.05 vs. 0.96±0.01, P<0.01)、ゲインが高く測定された(0.32±0.10 vs. 0.23±0.06, P<0.01)。
結語
PAZ測定においてLAPを考慮することで血管特性及び右室後負荷の評価精密化が得られた。