生体医工学
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外科的知識を含む医用画像を対象とした深層因果探索モデルの構築
元田 凌平御手洗 彰上田 順宏今井 裕一郎中尾 恵
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2025 年 Annual63 巻 Proc 号 p. 385-387

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抄録

 人間の理解を超えた複雑さを有する機械学習モデルの医療応用が進められる中,その解釈可能性の向上が課題となっている.従来より画像に対して用いられてきた顕著性マップは識別結果と相関の高い領域を可視化できるが,因果の存在や方向を扱うことはできない.統計的因果探索の分野では特徴量間の因果関係を抽出し,因果グラフとして可視化する試みがなされているが,画像を対象に解釈可能な因果を抽出する方法は知られていない.

 本研究では下顎骨再建計画における意思決定プロセスに内在する因果の可視化を目指した深層因果探索モデルを提案する.下顎骨再建術では,三次元CT画像の投影像を用いたシミュレーションを通して移植する腓骨片の数と配置が計画される.本モデルでは,画像を分割して得たパッチ間の因果関係を提案モデルによって抽出し,因果グラフとして可視化する.損失関数に因果行列に対するL1正則化を導入し,座標情報を各パッチの特徴ベクトルに結合することで,画像データに内在する因果を人間が解釈可能な形で可視化する.

 提案手法の有効性を確認するため,29例の下顎骨再建計画データベースに対して提案モデルを適用し,因果の可視化を試みた.提案モデルにより,空間的に関連する領域間にスパースかつ解釈可能な因果グラフが生成され,患者個人の下顎骨の画像特徴と医師による手術計画の間に見られる因果関係が可視化されることを確認した.

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© 2025 社団法人日本生体医工学会
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