生体医工学
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赤外線サーモグラフィによる新生児体温管理:保育器内での距離と角度がもたらす影響
濱田 啓介齊藤 大祐平川 英司内山 彰工藤 寛樹永田 康浩
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2025 年 Annual63 巻 Proc 号 p. 418-420

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抄録

[背景] 未熟児の適切な体温管理は、生存率向上に直結する重要な課題である。新生児集中治療室では高精度な体温測定が求められるが、接触式体温プローブには皮膚損傷や測定精度低下のリスクが伴うため、非接触かつ安全な測定方法の確立が急務である。我々は新生児体温管理の新たな手段として赤外線サーモグラフィカメラ(Infrared Thermography, IRT)を提案し、その測定精度に影響を与える要因を検討してきた。しかし、閉鎖式保育器内でのIRTと測定対象物との角度および距離が測定精度に及ぼす影響に関する報告はこれまでにない。

[目的] 閉鎖式保育器内におけるIRTと測定対象物の角度および距離が測定精度に及ぼす影響を調査する。

[方法] 新生児を模擬する測定対象物として黒体炉を保育器内に設置し、角度(10°、20°、30°)および距離(135mm、185mm、235mm)を変動させ、それぞれの条件下で表面温度を測定した。各条件において、12秒間隔でデータをサンプリングし、600秒間のデータから計50データを抽出して統計解析を行った。一元配置分散分析(ANOVA)を用い、有意差の有無を評価した。

[結果] 角度および距離の変動に対していずれも統計学的有意差が認められた(角度: F(2, 147)=9.43, p<0.05、距離: F(2, 147)=33.28, p<0.05)。

平均温度(角度):10°: 36.90±0.04℃、20°: 36.92±0.02℃、30°: 36.93±0.04℃

平均温度(距離):135mm: 36.95±0.05℃、185mm: 36.93±0.02℃、235mm: 36.89±0.02℃

[結語] IRTと測定対象物との角度および距離の変動に統計学的有意差が認められたが、平均値の差は臨床的に許容できる範囲に留まるため、実用上の影響は限定的であると考えられる。

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© 2025 社団法人日本生体医工学会
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