2025 年 Annual63 巻 Proc 号 p. 421-423
近年の再生医療の発展に伴い細胞・組織・シート工学材料の移植が増加傾向にあり,凍結保存に耐えられないものは0~4℃の冷温で保存されている.移植に際し細胞生存率を評価する必要があるが,保存可能期間が短いため時間的にきめ細かな管理が必要となる.
我々は,低侵襲かつ即時的に細胞生存率評価が可能な手段として電気インピーダンス計測に着目したが,その値は,細胞の配置や密度,保存液の組成,保存温度の影響を受ける.そこで電気インピーダンス計測による細胞生存率推定における普遍性確保のため,2周波数の比率と規格化補正を導入し検討してきた.結果として,実細胞生存率に対する誤差が軽減されたが,低細胞生存率で誤差が拡大することが新たな問題点として浮上した.誤差低減のためには,保存時間に対する細胞生存率の規格化補正による推定値と実測値の傾向が同様になる必要がある.
本研究では,組成と保存効果の異なる3種類の保存液を用い,単層培養ラット心臓横紋筋細胞を4℃で3~72時間保存した際の電気インピーダンスと実測細胞生存率を測定し,規格化補正による推定値と実測値の時間的傾向をつき合わせることで,低生存率における誤差要因について検討した.
その結果,全ての保存液において冷温保存後12時間までの高生存率では推定値と実測値の傾向が合っていたが,それ以降の低生存率では異なった.この要因は電気インピーダンス値の増加に伴うものであった.