抄録
先進国から途上国へのE-wasteの輸出に関して、輸出先で適正な処理が担保されず潜在汚染性が顕在化する問題や、再利用不可能な廃棄物が中古名目で輸出される問題などが生じている。これらは不透明な資源循環ルートへE-wasteが流れることで引き起こされる問題であり、適切な資源循環を確立するには国内外における制度設計が必要である。一方、この分野は未だ実態の把握そのものを研究対象とする段階にあり、例えば施策の効果を定量的に分析する研究はあまり行われていない。そこで本研究ではマルチエージェントシミュレーションを用い、家電リサイクルのフローを再現した上で、施策の効果を定量的に検証することを目的とした。特に家電エコポイント制度が消費者の廃棄行動のフォーマル化に貢献することを定量的に示すことができたこと、また試行的とは言え市中回収業者をモデルに含めることでシステムの枠組の外のフローをモデル化した点は本研究の大きな成果と考える。