抄録
福島第一原子力発電所の事故に伴って放出された放射性物質に由来して,各地の一般廃棄物焼却施設において放射性セシウム(以下,Cs)を含む焼却灰が発生している。その円滑な処分とリスク管理に向け,一般廃棄物焼却へのCsの移行と焼却灰への濃縮について地域や施設の処理方式による傾向を分析した。焼却灰のCs濃度と発生量から一般廃棄物焼却へのCs移行量を推定し,土壌沈着量に対する割合(移行率)を求めたところ,9割以上の施設で1%未満,高い施設でも数%と推定された。また,一般廃棄物焼却へのCs移行率は2011年7月から2012年1月にかけて減少傾向にあった。同様に推定した焼却ごみCs濃度に基づいて焼却・溶融飛灰へのCs濃縮率を求めたところ,施設の処理方式によって異なる傾向が見られた。これは,焼却処理量に対する飛灰発生率や焼却・溶融における飛灰へのCs分配率の違いによるものと考えられた。