抄録
我が国における鉄鋼・非鉄金属資源のフローに着目すると、その多くは建築資材あるいは自動車用途材料として用いられている。中でも特殊鋼の需要を支える自動車には多様な素材の部品が組み込まれており、鉄やアルミ、銅といったベースメタル、プラスチックをはじめとし、基盤に用いられるレアメタル、モーターに用いられる磁石に付随するレアアース等、多種多様なエレメントが自動車部品に随伴して存在する。翻ってスクラップ利用に目を向けると、現状では鉄スクラップの電炉リサイクルでは、合金組成別の選別が不十分であるため、磁力選別で漏れた一部ステンレスに含まれるクロムやニッケル、その他特殊鋼に含まれるマンガン、タングステン等のレアメタルは回収されることなくスラグに移行・拡散したり、あるいは鋼材に含まれる不純物質として蓄積したりしている。またアルミニウムスクラップのリサイクルでは、アルミニウム合金に含まれる不純物の大きな受け入れ先は自動車用途のエンジンブロックであり、今後、電気自動車の普及が進むにつれ、合金成分の管理制御は近い将来における重要な懸案事項になることが予想される。このような社会情勢を背景に、本研究課題は熱力学解析の視点からスクラップリサイクル過程において、随伴する合金成分がどのように循環、拡散、散逸しているのかを定量的に明らかにすると同時に、金属スクラップに随伴するレアメタルのさらなる有効利用に向けたシステム提案を行うことを目的とする。