抄録
世界的な穀物需要の増加やバイオ燃料の生産等に伴い、リン鉱石の価格は急騰している。特に国内需要の全量を輸入に頼る日本にとって、リン資源のリサイクルは急を要する課題である。金属表面の塗装時には、処理物表面に非金属皮膜を形成させ、耐食性と塗料の密着性を向上させる化成処理が行われる。このとき、処理剤としてリン酸亜鉛を主とするリン酸塩を用い、処理後にリン酸鉄を主成分とするスラッジが排出される。このスラッジは現在殆どが埋め立て処分されており、再利用方法の開発が望まれる。一方、リチウムイオン二次電池の正極材料として、リン酸鉄リチウムLiFePO4 がある。LiFePO4は発生電位と電子伝導性がやや低いものの熱安定性に優れ、経済的視点からも電気自動車用途への大型電池への活用が期待されている。本研究では、化成処理スラッジを原料としてリン酸鉄リチウムを合成、電極特性を測定し、リサイクルの可能性を検討した。