抄録
家畜ふん堆肥中の無機物や有機物は,重金属類と親和性が高い.そのため堆肥を土壌に添加すると重金属類の溶解性が低下し,その結果として生物毒性を低下させることが期待されているが,その収着メカニズムは不明である.本研究では堆肥を無機物と有機物に分画,各画分の溶液中での鉛収着量と化学性を比較検討し,鉛収着メカニズムを考察した.また堆肥現物と各画分への鉛収着量を比較し,堆肥の無機物と有機物への鉛収着の寄与を検討した.無機物画分への鉛収着メカニズムは,リンと鉛との反応による鉛-リン酸化合物の沈殿によるものと考えられ,リンが多い堆肥ほど鉛収着効果が大きかった.有機物画分への鉛収着量は,フミン酸が多いものほど多くなる傾向であった. 無機物画分は,その存在比に対し効果的に鉛を収着できることがわかった.土壌への堆肥施用を考えた場合,堆肥中の易分解性の有機物が少なく,リン量の多い堆肥が望ましいと考えられた.