抄録
2011年の福島第一原子力発電所の事故以来、市民のセシウムに対しての不安感が高まっている。焼却灰からの放射性物質の溶出特性を知ることで、埋立処分場の周辺住民との十分なリスクコミュニケーションを図ることを可能にすることが求められている。本研究では、焼却灰と安定セシウム溶液を用いて、温度、pH、共存塩の条件を変化させた振とう実験によってセシウムの焼却灰への吸着特性について調べた。その結果、温度が高ければセシウムの分配係数は低くなることが分かった。pHが酸性から中性になるにしたがって分配係数は上昇し、pH8程度で最大になり、アルカリ域でまた下がることが分かった。K、Na濃度が高いほど分配係数が低くなるということが分かった。実際の焼却灰埋立処分場ではK濃度が1000mg/L、Na濃度が5000mg/L程度になることもあるため、焼却灰の吸着能は著しく低くなってしまう可能性がある。