抄録
中華民国(台湾)の台北市で,最近,昭和8年(1933年)頃に日本によって建設されたと思われる都市ごみの焼却炉が発見され,歴史的な遺跡として紹介された上,台北市文化局により歴史建物として登録された。焼却炉は,岩本工業株式会社による岩本式自然通風焼却炉であった。そこで我々は文献を探し,岩本式焼却炉と,戦前の台北市に於ける廃棄物処理施設の実態について調査した。岩本式焼却炉は,1953年頃には,国内50以上の施設が稼働していたことを確認した。また,1938年の台北市衛生施設要覧から,台北市内には当時3箇所に岩本式自然通風炉があり,今回発見されたものはその中の1つであることを確認した。さらに2014年の暮れに現地の施設を見学する機会を得た。文化的にも貴重な施設であると考えられるので,その時の様子を,写真を用いて紹介する。