抄録
本研究は遊星型ボールミル装置を用いた金属水銀の硫化処理について、先行研究より大型の遊星ミルを用いて硫化水銀の合成を行い、スケールアップ可能性と適切な装置の運転条件について検討することを目的とした。 遊星ミルでの金属水銀の硫化について、2400 mL容器は1容器あたり1152 gまでのスケールアップ性が確認されたが、生成完了時間は先行研究よりも大幅に延長した。今回の装置の金属水銀処理能力は1536 g/hrと計算された。様々な運転条件を一元化して評価するため、遊星ミルの水銀処理量あたりボール1個あたりのエネルギーを定義して安定化に必要なエネルギーを試算したところ、日本の作業環境基準25µg/m3、EUの暫定規制基準3µg/m3を満たすために必要なエネルギーは19.42 J/g/個、19.98 J/g/個となった。また粉末X線回折の結果から赤色水銀の結晶性が高いものについてはヘッドスペース値が低い傾向にあった。今後容器形状やボール径などの点においてさらに検討することでより時間を短縮して安定な品質の硫化水銀を作成できると考えられるため、引き続き同様の試験を実施する予定である。