抄録
国内では年間約25万トンの卵殻が発生し、約8割が廃棄処分されている。一方、食品製造工場などで排出される油分含有排水の処理には凝集材や吸着材が用いられ、排水処理の低コスト化が希求されている。そこで本研究では、排水中に分散した米油などの食用油を、卵殻を用いて除去する方法について検討した。
加熱劣化した食用油を水中に高分散させた模擬排水に卵殻を添加したところ、n-ヘキサン抽出物質量(以下、n-ヘキサン値)が低下し、油分が除去された。このときに見られた白色析出物をFT-IR測定したところ、金属セッケンが含まれることが考えられ、卵殻の添加により油分だけでなく遊離脂肪酸も除去できる可能性が示された。さらに卵殻の添加に伴い模擬排水の濁度が改善したことに着目し、n-ヘキサン値との関連性を調べたところ、両者に高い相関性が認められ、排水の濁度が食品工場などの現場での排水管理の指標になる可能性が示唆された。