抄録
廃棄物を環境中に放置すると公衆衛生の面で問題が発生する。一方、ごみ処理施設は、社会的に必要な施設であるが、施設周辺住民にとっては、交通公害や汚染物資の漏洩の恐れなどの重大なリスクを発生させるおそれのある迷惑な施設となるおそれがある。迷惑施設は、だれでも利用することのでき、社会全体が便益を受けることのできる、いわゆる公共財(サービス)のひとつである。ところが社会の認識と地域住民の間のリスクに対する認識については重大な齟齬があり、リスクの配分を巡って、深刻な紛争に発展することがある。いわゆるNIMBY(Not in my backyard)である。NIMBYは、社会的な必要性は認めるが、自分の裏庭に立地することは認められないということである。廃棄物施設の社会的な必要性と施設周辺の住民の利益において、社会の多数派の利益が優先されることがなかった点について明らかにしていく。