抄録
本研究では、サービス業における顧客維持戦略において、顧客満足と両輪をなす重要性を持つスイッチング・バリアに着目し、それを形成する要因とそれが顧客リレーションシップにもたらす成果に関し、複数の業種について実証的に検討した。 「手続き的」「関係的」「経済的」という 3つのスイッチング・バリアがそれぞれ、顧客ロイヤルティや感情的・計算的コミットメントに異なる影響を与えること、またさまざまなサービス品質に関する評価や顧客の利用状況によって異なるスイッチング・バリアが形成されうること、さらにそれらの関係性が業種によって異なることが明らかになった。スイッチング・バリアに関する汎用的かつ実証的な先行研究が十分でない中、バリアのタイプについて多面的に測定したこと、また百貨店、コンビニエンスストア、携帯電話、損害保険という特徴の異なる 4つの業種にまたがって横断的に測定し業種による比較を可能としたことで、スイッチング・バリアの先行指標と成果指標に関してより多くの知見が得られたことが、本研究の意義の一つと言える。