流通研究
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取引費用要因とケイパビリティ要因がチャネル統合度に及ぼす影響
髙田 英亮
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2013 年 15 巻 1 号 p. 15-38

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抄録

本稿は,製造業者がチャネル統合の意思決定を行う際の取引費用要因とケイパビリティ要因の影響について,理論的・経験的な検討を行う。具体的には,まず, Williamsonの取引費用理論と Langloisや Fossらのケイパビリティ理論それぞれの基本的主張が整理される。次に,その 2つの理論の主要仮説を製造業者によるチャネル統合問題の状況で捉えた場合の基本的内容について説明が行われ,仮説が提示される。その後,提示された仮説が,卸売段階のチャネル統合問題の状況において,わが国の製造業者の 273事業部より得たアンケート調査データを用いて経験的にテストされる。実証分析の手法としては,共分散構造分析と階層的回帰分析が用いられ,分析の結果,人的卸売資産の特殊性と物的卸売資産の特殊性という取引費用要因と,製品知識の技術的複雑性,生産・卸売活動間の相互依存性,および卸売市場の厚みというケイパビリティ要因が,卸売チャネルの統合度に統計的に有意な影響を及ぼしていることが示される。また,卸売成果の測定困難性という取引費用要因が卸売チャネルの統合度に有意な影響を及ぼしていないことと,総じて取引費用要因よりもケイパビリティ要因のほうが卸売チャネルの統合度に相対的に大きな影響を及ぼしていることが示される。

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© 2013 日本商業学会
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