2014 年 16 巻 3 号 p. 69-93
本稿は、近年注目される社会的企業家の活動を手がかりとして、事例分析を行い、関係性概念にもとづく公共・非営利組織のマーケティング研究の可能性を検討する。事例として山梨のワインツーリズムを考察し、社会的企業家を取り巻く多様なステイクホルダーの関係性が、事業を進めていく上での前提となりつつも、再構築されていくダイナミズムを示す。併せて、事業の公共・非営利性が、動態的に変化する関係性に翻弄されながら、事業の途上で構築されていくことを示す。こうした試みは、事業の公共・非営利性を事前に定義して対象を分析するのではなく、当の公共・非営利性をめぐる活動自体が、公共・非営利組織のマーケティング研究の重要な研究対象として捉えられることを示す。