流通研究
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16 巻, 3 号
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特集論文
  • 芳賀 康浩
    2014 年 16 巻 3 号 p. 3-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     近年の CSR ブームを背景に,単なる責任論ではなく,より積極的な戦略論としてのソーシャル・マーケティングが注目されている。それに伴って,CSR 活動とマーケティング成果の関係を明らかにしようとする実証研究が急速に蓄積されている。しかし,そうした諸研究の成果を総合する理論的基盤は用意されていない。そこで本稿では,ソーシャル・マーケティングが登場し,マーケティング研究の一領域として認められるようになる際に基礎概念として用いられた交換概念を再検討し,その有効性を確認する。そのうえで,戦略的ソーシャル・マーケティングの展開方法への示唆を得るために,CSR 活動に関する戦略的意思決定の基礎となる CSR 活動のターゲットやその戦略目的に関する代替肢を識別する。
  • 玉置 了
    2014 年 16 巻 3 号 p. 25-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     本稿は,倫理的製品の購買行動を消費によるアイデンティティ形成意識と倹約志向・特売志向という 2 つの節約意識の視点からとらえ,質問紙調査と購買履歴データを用いた分析を行った。まず,既存研究のレビューにより倫理的製品の購買に対して消費者のアイデンティティ形成意識と倹約志向がその促進要因となり,特売志向はその抑制要因となるという仮説を設定した。次に農産物を対象とし,これらの仮説検証を試みた。その結果,自己イメージと所有物の一貫性及びブランド価値の自己への投影を通じた消費によるアイデンティティ形成意識が倫理的農産物の購買に対する促進要因となることが明らかになった。一方で,節約意識の視点からは,自律的消費による倹約志向はその促進要因にはならず,特売志向と貯蓄のための消費抑制による倹約志向が倫理的農産物の抑制要因となることが明らかになった。
  • 西尾 チヅル, 石田 実
    2014 年 16 巻 3 号 p. 49-67
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     本研究は、東日本大震災が消費者の関与や商品の利用にどのような影響を及ぼしたかを、震災前後に実施した消費者パネル調査を用いて解明を試みた。関与は、個人に内在する自己関連性と消費者の置かれている状況との関連性によって規定されるという先行研究の枠組みに則って、消費者のエコロジー関与や健康関与の強さが、個人特性や専門知識といった個人に内在する自己関連性と被災体験やボランティア等の被災地支援体験によって規定されるかを分析した。その結果、東日本大震災後、日本人全体としては、エコロジー関与も健康関与も低下しているが、震災体験の違いや個人特性間でその強さは異なること、被災体験やボランティア等の震災支援体験は消費者の関与を高めることが確認された。また、エコロジー商品や健康商品の利用度を規定するモデルを提示し、実証データに基づいてその妥当性を確認すると共に、震災体験によってその構造が異なるか否かを検討した。その結果、提示モデルはデータとの適合度も高く、仮定したような因果性が確認された。特に、商品利用に対する準拠集団の規範の影響が強いことが示された。なお、これらの因果構造は震災前後で不変であり、また、震災体験や個人の特性間でも概ね一貫していた。一方で、各要因の強さは震災体験や個人特性間で異なっており、震災後、エコロジー商品に対する性能不安やコスト・労力評価は総じて低下し 環境負荷の低減といった有効性評価や生活の質向上といったベネフィット評価は高まっていることが示された。これらの成果に基づきマーケティング展開の方向性について考察した。
投稿論文
  • ―関係性概念にもとづく公共・非営利マーケティング研究の再検討―
    日高 優一郎, 水越 康介
    2014 年 16 巻 3 号 p. 69-93
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
     本稿は、近年注目される社会的企業家の活動を手がかりとして、事例分析を行い、関係性概念にもとづく公共・非営利組織のマーケティング研究の可能性を検討する。事例として山梨のワインツーリズムを考察し、社会的企業家を取り巻く多様なステイクホルダーの関係性が、事業を進めていく上での前提となりつつも、再構築されていくダイナミズムを示す。併せて、事業の公共・非営利性が、動態的に変化する関係性に翻弄されながら、事業の途上で構築されていくことを示す。こうした試みは、事業の公共・非営利性を事前に定義して対象を分析するのではなく、当の公共・非営利性をめぐる活動自体が、公共・非営利組織のマーケティング研究の重要な研究対象として捉えられることを示す。
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