2015 年 17 巻 3 号 p. 39-63
本稿の目的は、用途革新に関するユーザーの「頼みもしないアイデア」がメーカーによって事業化される要因について、探索的検討を行うことである。事例研究の結果、かかる用途革新をメーカーが事業化するには、需要が不確かな中、補完資産への投資を行わなくてはならないという問題に直面すること、そしてこの問題は、新規事業に対するモチベーションの高さというメーカー側の要因だけでなく、(1)ユーザーによる需要の創造、並びに顕在化活動、そして(2)粘着性の高いニーズ情報の機能要件への翻訳というユーザー側の要因によって、克服される可能性が示された。また、ユーザーイノベーションをとらえる範囲を用途革新にまで拡大することで、リードユーザーの探索範囲に関して再考の必要性が示唆された。