流通研究
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17 巻, 3 号
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投稿論文
  • ―生産企業による小売企業への融資―
    成生 達彦, 倉澤 資成
    2015 年 17 巻 3 号 p. 1-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/29
    ジャーナル フリー
    本稿では、垂直的取引関係にある小売企業の資本構成が生産企業や小売企業の意思決定、さらには両企業の価値に及ぼす効果について検討する。主な結論は、小売企業がリスクのある債券を金融市場で起債することはないが、生産企業による融資なら受け入れるというものである。生産企業が小売企業にリスクのある融資を行うことによって、二重マージンが軽減され、両企業の価値は増加する。この際、生産企業による小売企業への貸付額は期待返済額よりも少なくなることがある。
  • ―メタアナリシスによる研究成果の統合―
    石田 大典
    2015 年 17 巻 3 号 p. 13-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/29
    ジャーナル フリー
    Narver, Slater, and MacLachlan(2000; 2004)によって提唱された先行型市場志向と反応型市場志向に関して、多くの研究者たちがイノベーションやパフォーマンスとの関連性を議論してきた。本研究では、約 10年間にわたり取り組まれてきた先行型市場志向と反応型市場志向に関する実証研究を整理し、メタアナリシス・アプローチによってレビューした。38 篇の論文を対象とした分析の結果、先行型市場志向は組織の革新性を媒介して間接的にパフォーマンスへ影響を及ぼす一方、反応型市場志向は直接的に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、調査対象企業の業種や調査実施国の文化特性の違いは、先行型市場志向とパフォーマンスの関係へほとんど影響を及ぼさないことも明らかとなった。
  • ―ユーザーによる用途革新の事例をもとに―
    堀口 悟史
    2015 年 17 巻 3 号 p. 39-63
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/29
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、用途革新に関するユーザーの「頼みもしないアイデア」がメーカーによって事業化される要因について、探索的検討を行うことである。事例研究の結果、かかる用途革新をメーカーが事業化するには、需要が不確かな中、補完資産への投資を行わなくてはならないという問題に直面すること、そしてこの問題は、新規事業に対するモチベーションの高さというメーカー側の要因だけでなく、(1)ユーザーによる需要の創造、並びに顕在化活動、そして(2)粘着性の高いニーズ情報の機能要件への翻訳というユーザー側の要因によって、克服される可能性が示された。また、ユーザーイノベーションをとらえる範囲を用途革新にまで拡大することで、リードユーザーの探索範囲に関して再考の必要性が示唆された。
研究ノート
  • 安藤 和代
    2015 年 17 巻 3 号 p. 65-85
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/29
    ジャーナル フリー
    近年、企業はターゲット層に向けて大量のサンプル配布や試用イベントを行ったり、記者発表会と並行してアルファ・ブロガー向け商品説明会を開催したりしている。商品を提供することで消費者の認知や商品理解を高めることに加え、対面あるいはソーシャルメディアを用いて使用後の感想が広まることを期待してのことである。クチコミマーケティングを実践する企業の関心は、潜在顧客である情報受信者の態度や行動に対してプラス影響を及ぼすことにある。したがって、クチコミ研究の多くは受信者に及ぶ影響に焦点をあてたもので、発信者におよぶ影響には注意が払われてこなかった。そこで本研究では、クチコミマーケティングで目指されるポジティブなクチコミを語る行為が、発信者の評価や行動や記憶に与える影響を明らかにすることを目的とする。口述・記述することで理解(センス・メイキング)が進み、既存の知識や経験で解釈が可能になると、対象の新奇性や驚きが薄れ、発信者の対象に対する評価やクチコミ意向は時間の経過の中で低下する(仮説 1・2)。またクチコミの骨格に沿った情報が限定的に処理されるため、記憶される内容は正確だが限定的である(仮説 3・4)といった仮説を設定し、実験データを用いて検証したところ、仮説は支持された。顧客維持の観点から、発信者に及ぶ影響を考慮したマーケティング計画の策定が重要であることが示された。
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