2024 年 27 巻 3 号 p. 19-37
過去20年の間に,不確実性を増大させる出来事が複数発生し,その度に消費の減退や企業成長の停滞が引き起こされてきた。本研究は,そのような状況で顧客満足度がどのような効果を持つかを明らかにする試みである。マーケティング-ファイナンス・インターフェイス研究分野では,顧客満足度が企業業績にポジティブな効果をもたらすことは広く認識されているが,不確実性が変動する中でのその効果は十分に理解されていない。本研究では,不確実性を定量的に評価した指標である,経済政策不確実性指数(EPU Index)を用いたパネルデータ分析を通じて,不確実性と売上高成長率の関係性に対する顧客満足度の効果を検証した。その結果,不確実性が高まると売上高成長率は低下する一方,顧客満足度がそのネガティブな影響を緩和することが明らかとなった。これは,強固な顧客関係は不確実性が高まる状況での業績悪化を防ぐ防波堤となり得ることを示唆する。