2024 年 27 巻 3 号 p. 3-17
本論の目的は,マーケティング・ユニットの企業内での位置付けの違いが,企業の市場学習,急進的な製品開発の頻度に与える影響について検証することである。本論ではまず,既存研究レビュー,調査を踏まえ,マーケティング・ユニットの企業内での位置付けは,3つのパターンに分類できることを明らかにした。その上で,仮説として,マーケティング・ユニットの位置付けの違いは,企業が探索的な市場学習(i.e.,潜在市場・顧客についての情報収集)に従事する程度に違いをもたらすこと,さらに探索的な市場学習は急進的な製品開発の頻度に正の影響を与えることを予想した。日本の中小規模の企業を中心とした162社のデータを分析した結果,独立したマーケティング・ユニットが設置されている企業は,それ以外のタイプの企業よりも,探索的な市場学習に高い程度で従事する傾向にあること,さらに探索的な市場学習が急進的な製品開発の頻度に正の影響を与えることが示唆された。